The Reverberator

メモ用

なぜ子どもへの性的虐待加害者の行動原理を知らなければならない必要に駆られるのか。それはこの社会ではこれまでずっと被害者の声が無視されてきて、そしてこれからも被害者やその家族、友人、知人、支援者たちがいないことを前提にした「組織的暴力」によって被害者と加害者が同列に置かれ、時にまるで被害者らの心の痛みよりも加害者の欲望を優先させるかのような要求を突き付けられ、それによって被害者たちがさらに、これまで以上に、沈黙させられてしまうからだ──そのような世界の中にあっても居場所を探さなくてはならないからだ。

森田ゆり『子どもと暴力 子どもたちと語るために』(岩波現代文庫)より

性虐待がかなりの数で起きていること、そしてその被害者への影響の深刻さが明らかになるにつて、1970年代の後半から北米では子どもたちに防止教育を提供する動きが市民レベルで始まった。


日本で全国規模で行われているCAP(キャップ、子どもへの暴力防止)は1978年にオハイオ州コロンバスのレイプ救済センターが開発したプログラムで、暴力防止教育プログラムの草分け的存在である。

1980年代に入ると北米では似たようなプログラムが次々と誕生し、保育園、学校で実施され始めた。CAPの場合は性虐待に限らずいじめを含むあらゆる子どもへの暴力の防止を教えるプログラムだが、他のほとんどのプログラムは性的虐待防止を目的として開発された。

加えて、性虐待にあったらどうしたらいいかを子どもたちに教えるカリキュラム、ビデオ、絵本、教材は80年代には何千点と刊行された。こうしたプログラムの効果を測る研究もしばしば行われ、その多くは子どもに直接教える暴力防止プログラムが一定の効果をあげていることを示してきた。


防止プログラムが子どもたちに教える内容に役立てることを加害者の証言から得るという目的で行われた珍しい調査研究がある。「性虐待加害者へのインタビュー調査から性虐待防止の方法として学べること」と題して、当時シカゴ大学社会福祉学部教授のジョン・コンテらによって行われたものだ。


ここで紹介するのはその中の性虐待加害者がどのように子どもを虐待したか、その手段、手口をインタビューした結果である。サンプルは20人と少なく、ひとつの治療センターにいる加害者だけを対象とした調査なので、この結果をもって一般論とすることはできない。

 

質問1 何人の子どもに被害を与えたか?
回答  一人だけに被害を与えた人から最高40人に被害を与えた人までさまざまで、平均7.3人になる。このうち最年少の被害者は1歳半の乳児。女子と男子の被害者率は3対1。加害者の半数以上は自分の子どもに被害を与えている。大半の人は知っている子、知らない子の両方をターゲットにしているが、知らない子だけをターゲットにした加害者はいなかった。

 

質問2 ターゲットにした子どものどのような外見に惹かれたのか?
回答  なんらかの好みの外見(たとえば滑らかな肌、長い髪、褐色の肌、等々)を述べた人もいるが共通した外見というものはない。共通していることは「人なつっこそうな子」「簡単にだませそう」「大人を信頼しきっている」「NOと言いそうにない子」「簡単に言いなりになる子かならない子は、表情やしぐさですぐにわかる」。

 

質問4 ターゲットにする子を選んだ後、捕まるかもしれないと思ったか?
回答  大半は「イエス」と答えた。

「だから捕まることにならないような子を選ぶ。」

「行為をする場所と時間にも気をつける。」

「だから私は7歳以上の子はターゲットにしない。年少の子は何をされているかわからないから誰にも言わない。」

 

質問7 どうやって被害者をコントロールしたか?
回答  大人の権威、大人のからだの大きさ、誰もいないところでやるといったことがコントロールの手段だったと加害者たちは言う。
「たいていの場合、わたしがその子を一人で世話する立場だった。」

「娘と二人だけでおしゃべりして時間を充分に過ごす。そしておまえはお父さんの特別な子だ、とても誇りに思っているよと何度も言う。」

体罰。娘と妻が外に友人を持たないようにした。彼らが孤立することで捕まる可能性が薄くなる。」

「他の子には買わないものを彼女には買う。」

「わたしの被害にあった子どもたちは困惑していたようだ。彼らが信頼できる大人だと思い込んでいるわたしが、彼らの嫌がることをする。それも彼らと遊んでいるような雰囲気でやっていたから。」

 

質問9 もし子どもを性的に虐待するためのマニュアルを書くとしたら……
回答  加害者たちは人に構ってもらいたがっている子どもと親しくなるためのさまざまな方法を述べ、さらに徐々に性的な接触をしていくやり方、または脅かす方法を答えた。
「一緒に住むような策を講じる。性的なジョークを頻繁に言う。ポルノ雑誌を子どもの目につくところに置いておく。セックスについて喋り、子どもの反応を見る。優しくする。ほめ言葉をいつも言う。誤って胸に触ってしまうようなことをときどきする」

「こちらの行為ひとつひとつにどう反応するかを観察する」

「親とも親しくなって子どもを預かってあげる」

「自分を大好きなおじさんにする」

「友だちのいない子を選ぶと簡単に自分を友だちだと思ってくれる」

「愛されていない寂しい子を選ぶ。優しくしてあげる」

「家庭が幸せでない子を選ぶ。信頼を簡単に得られる」

「親から構ってもらっていない子、すでに虐待されている子を選ぶ。そして優しくする。友だちになる」

「愛されていない子を選ぶ。信頼を得るまで優しくする。そして強制されていると思わせないようにする。愛をおとりに使う。脅してはいけない。性的行為をするのもしないのも彼女の自由だと思わせる」

「すぐに言いなりになりそうな子を選び、ほめ言葉をたくさん言う」

 

p.166-173 

 

 

子どもと暴力――子どもたちと語るために (岩波現代文庫)

子どもと暴力――子どもたちと語るために (岩波現代文庫)

 

【関連】