The Reverberator

EFFORTLESS FRENCH

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

標的の充足力、標的への敵意、標的の脆弱性 ~ 被害者学の視点から

デイビッド・フィンケルホー(David Finkelhor) の『子ども被害者学のすすめ』(森田ゆり/金田ユリ子/定政由里子/森年恵 訳、岩波書店)より 被害者学とは 被害者学とは、犯罪や事故、自然災害などの被害者とその家族や遺族に注目し、被害者の救済支援、…

沈黙の共謀 ~ 「誰にも言うなよ」と加害者が強いる沈黙、被害者が守ろうとする沈黙、そして被害者が語れない環境を温存している社会全体が培養する沈黙

森田ゆり『子どもの性的虐待』(岩波新書)より 沈黙の共謀 なぜ子どもへの性的虐待が起きるのか。この素朴な疑問に対する答えは単純ではない。一つの性的虐待ケースの発生にはさまざまな要因が重なっている。個人、家庭の持つ要因の背後には、文化的・社会…

児童期に性犯罪被害に遭わなかった幸福な人たちにあわせて社会をつくるのではなく、児童性的虐待被害者たちが暮らしやすい社会にするよう配慮すること

柴田朋『子どもの性虐待と人権 社会的ケア構築への視座』(明石書店)より 児童性的虐待という極端なトラウマ状態に襲われると、脳における感情のセンサーともいうべき扁桃体から、ある種のホルモンが放出される。そのホルモンは、直面する外界の情報(出来…

デート中の出来事──少年と少女の性暴力

ロジャー・J.R.レヴェスク『子どもの性的虐待と国際人権』(萩原重夫訳、明石書店)より。 少年は、大人によって行われた場合には、DVとか、夫婦間暴力とかと名づけられるものと同じ性質の、身体的、心理的、および性的虐待を、自身の性的関係において…

セックス・リング 同一の加害者の下で複数の被害者が抱いてしまう共犯意識

アンデシュ・ニューマン、ベリエ・スヴェンソンの『性的虐待を受けた少年たち ボーイズ・クリニックの治療記録』(太田美幸訳、新評論)より。 ペドファイルが子どもへの性的虐待で告発された場合、その人物は複数の子どもに虐待行為を行っていたと考えられ…

「被害者の責務でしょう、あなたたちがやらないと変わりませんよ」 ~ 「泣き寝入り」という言葉の暴力

『現代思想』(1997年12月号、青土社)に掲載された、弁護士の角田由紀子氏と翻訳業の原美奈子氏との対談「性暴力と法」より。 原 たとえば性暴力の場合、告訴率が低いとか、それ以前に被害者が警察に届け出ないから、泣き寝入りをしないで警察に訴えて下さ…

子どもの性的虐待の理解 ~ 虐待の程度および虐待の性質

ロジャー・J.R.レヴェスク『子どもの性的虐待と国際人権』(萩原重夫訳、明石書店)より。 虐待の程度 性的虐待であるとみなされる行為に対する、相当の関心と広範な非難にもかかわらず、様々な国で子どもたちが虐待を経験する程度は、依然として本質的…

女性による男児への性的虐待という現実と、女性による男性あるいは少年への性的虐待は定義上不可能であるという誤った「男性的」世界観の間で

アンデシュ・ニューマン、ベリエ・スヴェンソンの『性的虐待を受けた少年たち ボーイズ・クリニックの治療記録』(太田美幸訳、新評論)より。 女性による虐待 女性による子どもの性的搾取は、どれくらい起こっているのだろうか。これについての調査結果を見…

日本における少年への性的虐待に対する社会的認知

アンデシュ・ニューマン、ベリエ・スヴェンソンの『性的虐待を受けた少年たち ボーイズ・クリニックの治療記録』(新評論)で、冒頭、本書の訳者である太田美幸氏が「訳者まえがき」で日本の現状について解説している。 性的虐待 日本の現状 1998年に「 子ど…

「なぜ私は加害者の弁護をしないのか」 ~ 性暴力と法

以下は『現代思想』(1997年12月号、青土社)に掲載された「性暴力と法」について、弁護士の角田由紀子氏と翻訳業の原美奈子氏との対談より。 角田 法律の中で強姦の問題は、最初から最後まで加害者側の男の頭でしか考えられていないし、語られていない。だ…

二次的被害によるPTSD

……現段階では、視聴によってもたらされた被害を訴えてゆくことは、必ずしも容易なことではない。性暴力映像が視聴者にもたらす被害または被害の認定という枠組み自体が、社会的にまだ存在しておらず、そのような被害を理解してもらうことは困難だからである…

性暴力表現の社会問題化による「調査者自身が受ける被害」

社会問題化によって生じた第三のジレンマは、社会問題化を推進する主体が、映像を上映したり、分析したりする作業を通じて、さらなる心理的被害を重ねてしまうことである。 私自身の経験を振り返ると、恐怖、怒り、不安、無力感や孤立感に襲われた。性暴力映…

性暴力扇動商品による性の衝動化・中毒化

北米の調査では、刑務所、精神診療所、及び福祉施設で確認された、己の娘に性犯罪を遂行した三七三人の父親たちの供述によれば、その中の八〇パーセントが性暴力扇動商品によって、衝動的な児童性虐待性欲を得た。本来人間が持つ根源的な性的エネルギーは、…

性暴力被害者に対する社会的物象化

児童性虐待サバイバーは、攻撃されると、起きた出来事を、認識し意識化する(海馬体が登録・エンコードする)プロセスが急激に遅くなるために、即叫んだり、訴えたりすることができない傾向がある。そして、こういった解離障害を持つ人を選び出す方法が実際…

性暴力扇動商品と性犯罪者処遇プログラム

東北大学の大渕憲一らは、「アダルトビデオ」を七二人の「普通」の男子学生に見せる前と見せた直後に、強姦意欲に関する心理テストをして、「アダルトビデオ」視聴による強姦意欲をつくりだしたかを調査した。すると、「アダルトビデオ」の中でも、レイプビ…

性暴力扇動商品は、性暴力を消費者に扇動するのみならず、性暴力を容認し、無罪化する「社会通念」と判例傾向を促進する

広範囲に及ぶ実証研究並びに、実際の性犯罪加害者調査と、性暴力被害者たちの証言を包括した、一九六〇頁にものぼる、アメリカ合衆国連邦政府法務省ポルノ調査委員会最終報告書(一九八六年)においても、暴力ポルノが(父親による女児性虐待を含めた)性犯…

「平等法」と「表現の自由法」は衝突へ向かっている。世界中において、「表現の自由」保障は、社会的不平等の問題や大幅な法的平等が必要であることなどに真剣に取り組むことをせずに発展してしまった。

「平等法」と「表現の自由法」は衝突へ向かっている。世界中において、「表現の自由」保障は、社会的不平等の問題や大幅な法的平等が必要であることなどに真剣に取り組むことをせずに発展してしまった。平等と表現のあいだに存在する緊張は、アメリカにおい…