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これで…ちゃんと正しい方向にむかっているのか? ~ 大学において適切な柔軟性を発揮できない非正規労働者は試験によって選抜され、排除されなければならないのか? 社会的なリソースと権利とのより平等な再分配の追求を最初から目指すことなく、既存の不平等な体制内部での権利でさえも反故にしているのではないか? 「こんなことをやっている/やってきた」大学関係者の指導の下に行われるクィア・ポリティクスとはいったい何か? どんな権能で大学関係者は私たちのあり方や私たちの社会活動を評価することができるのか…これで? 

東京大学が非常勤職員8000人大半の雇い止めを強行か  Yahoo! ニュース 9/5

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東大の非常勤の雇用形態は2種類ある。「特定有期雇用教職員」は特任教員や看護師・医療技術職員など約2700人。「短時間勤務有期雇用教職員」は、パートタイムワーカーで約5300人もいる。

2013年4月に施行された改正労働契約法は、5年以上同じ職場で働く非正規労働者が希望した場合、無期雇用に転換することを定めている。組合側は、2018年4月以降、希望者全員の無期雇用転換を求めているが、大学は契約期間の更新を上限5年とする「東大ルール」を法律よりも優先。法人化前から働く480人など一部を除いて雇い止めする方針だ。 

 

 

東京大学で起こった、非常勤職員の「雇い止め争議」その内幕 Yahoo! ニュース 9/7

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さらに、「東大ルール」には「6か月のクーリング期間の適用」が記載されている。5年働いたパート教職員は、6か月の休業期間を経た後なら、再び上限5年で雇用することを可能、としている。

  が、改正労働契約法では、一度6か月もの休業期間を経ると、「雇用継続の期待権」がリセットされてしまい、無期転換の機会を失ってしまうことが定められている。5年働いても、その後半年間の休みをとれば、勤務期間がまた「ゼロ」からとなり、いつまでも無期雇用には至らなくなってしまう。

  文書では、これがさも合理的であるかのように記載されているが、無期転換(正規雇用化)を阻止するためにクーリングすることは違法、または脱法行為にあたるとさえいわれている。 

 

 

団交の場で、大学側は2018年4月から「職域限定雇用職員」という、フルタイムで定年まで働ける、新たな非正規教職員制度を作ると説明した。契約期間が満了しても引き続き働きたい人は、フルタイムの人もパートの人も、毎年秋に実施される試験を受け、それに合格すれば、非常勤ながら定年まで働くことが可能になる制度だという。

 

大学側は「この試験に合格すれば無期雇用になるので、試験を受けてほしい」と、誰でも受けられることを強調するが、組合側が「試験に受からなかった人はどうなるのか」と質すと、大学側は「試験に落ちた人を保障する必要はない」と回答。つまり、試験で落としてしまえば、その職員を再度雇う必要はない、ということのようだ。

 試験に受からない場合は「その人の責任」で、不合格によって雇用が途切れるのは大学側の責任ではない、という理屈をつくるための制度だ、と組合側は受け取っているという。

 

 

東北大、3200人を一斉「雇い止め」に職員が反対運動…大学側が一方的に規則変更 Business Journal 2016.12.27

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問題の背景には、13年4月1日に施行された改正労働契約法がある。最大のポイントは、施行日以降に締結した有期契約で、更新を繰り返して契約年数が通算5年に達した場合、労働者が無期契約を申し込めば、その時点で使用者が申し込みを承諾したものとみなされることだ。
細切れに契約を更新する有期雇用労働者は全国に1200万人と推計されており、彼らの雇用を安定化させることを目的とした法改正である。

 しかし、5年たてば無期雇用契約に変更する権利を得るだけで、給与その他の条件は直前のままだ。つまり、給与などの条件が悪いまま雇用だけが確保されるという側面もあるため、“第二正社員”的な新たな身分をつくる可能性もある。

 法改正によって多くの混乱も生じた。改正法施行前に契約を繰り返して通算5年を超えていた非正規社員たちが、全員正社員になれるかのように誤解する向きもあった。その一方で、“正社員のような”地位の労働者が増えることを防ぐために、改正法が施行される前に、契約の最長期間を5年以内とする就業規則を定めてしまえばいいという考え方をする雇用者も現れた。

今回の東北大は、この考えに基づいた行動をとっている。非正規職員が無期契約に転換できないように、法の趣旨とは真逆に5年で雇い止めにする就業規則を制定したことが騒動の原因なのだ。 

 

 

早稲田大学で起こった「非常勤講師雇い止め紛争」その内幕 現代ビジネス 2017/07/26

gendai.ismedia.jp

 闘争のなかでは、「専任教授」と「非常勤講師」間の驚くほどの格差も明らかになっていった。これこそまさに大学側が隠したかったものだろう。非常勤講師らもうすうすは知っていたものの、まさかここまでのものだったとは、と驚きを隠せなかったという。

非常勤講師組合が2007年に発表した調査結果によると、非常勤講師の平均年齢は45.3歳、平均年収は306万円。44%の人が年収250万円以下だった。

一方早稲田の専任教授の年収は1350万円。専任教授の就業規程によれば、義務とされている授業のコマ数は週4コマである。

非常勤講師が4コマの授業を担当した場合、1コマ約3万円なので、年収は144万円。同じように大学院を卒業して、場合によっては非常勤講師の側は博士号をもっており、専任教員はもっていないにもかかわらず、その年収には10倍近い開きが生じるのだ。

 

  

 これで……ちゃんと正しい方向にむかっているのか? 大学において適切な柔軟性を発揮できない非正規労働者は試験によって選抜され、排除されなければならないのか? 大学ではそもそも社会的なリソースと権利とのより平等で公正な再分配の追求を最初から目指すことなく、既存の不平等な体制内部での権利でさえも自分たちの都合=大学の都合で平然と反故にしているのではないか? 大学の非常勤職員をいったいなんだと思っているのだ? 同じ大学で働いているのに、その人たちのことを同じ人間だと思っていないんじゃないのか? 自分たちの「研究する自由だけ」を追求できれば、それでいいのか? このような搾取的な関係性を承認するよう非正規労働者のような社会的に立場の弱い人たちに高圧的に迫っているのは、「この大学」ではないか? なぜこんなことがまかり通ってきたのだ? 2009年からすでに「この大学」で雇い止めの問題が訴えられてきたのに、どうしてそのようなことが無視されてきたのか? 問題を設定するのは誰なのか? なぜこのようなことが知らされてこなかったのか? 「こんなことをやっている/やってきた」大学関係者の指導の下に行われるクィア・ポリティクスにいったいどんな信憑性があるのか? これは、ネオリベラルな体制のもたらす不安定さによって生存を脅かされる人々から切り離されてしまっている「その」クィア理論そのものの信憑性の問題、「その」クィア・スタディーズそのもののあり方の問題なのではないか? いったいどんな権能でどこから与えられた権能で「その」大学関係者は私たちのあり方や私たちの社会活動を評価することができるのか……これで? 「大学はこのままでいい」のか? これで?

  

 

あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太には気づかないのか。兄弟に向かって、『あなたの目からおが屑を取らせてください』と、どうして言えようか。自分の目に丸太があるではないか。偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け。

 

 

マタイによる福音書 7.3-5 新共同訳聖書

 

 

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