日本の研究者に米軍資金 12大学・機関に2億円超
東京新聞 2015年12月7日
米軍が二〇〇〇年以降、少なくとも日本国内の十二の大学と機関の研究者に二億円を超える研究資金を提供していたことが分かった。米国政府が公表している情報を基に共同通信が取材した。政府の集団的自衛権の行使容認で、今後は一層増加する可能性もあり、軍事と研究の在り方をめぐる議論に影響を与えそうだ。
米政府は、十二を含む日本国内二十六の大学などの研究者に計百五十万ドル(現在のレートで約一億八千万円)超を提供したとしている。このうち十二の大学、機関が、公表されていなかった資金を含めて受け入れを認め、総額は二億二千六百四十六万円となった。残り十四は「文書の保管期限が切れており確認できない」「該当はない」などと回答した。
在日米軍司令部は取材に対し「日本の大学や研究機関に数十年にわたって資金提供している。提供は主に陸軍や空軍など米軍の各組織の科学的な優先順位に基づいている」とコメントした。
日本の学術界は先の大戦の反省から軍事研究と距離を置いてきたが、最近は研究費不足や、軍事技術と民間用技術の境目があいまいになっている傾向から抵抗感は小さくなっており、統一ルール作りが必要との声も出ている。
東京工業大は〇五年以降、炭素繊維複合材などに関連する十一件の研究計八十七万ドル(同一億六百八十万円)の提供を受けることで米軍と合意している。学内で定めた要領に基づいて審議し「研究ポリシーにかなうと判断された」という。理化学研究所も〇〇~一〇年に二件で計四千七百九十八万円の提供を受けた。
複数の大学や研究者は「研究費の不足を補うためだった」と説明。資金は研究に使う薬品の購入などに充て、米軍には「簡単な報告書を書いて送っただけ」としている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015120702000125.html
12研究機関に米軍資金 名城大など計2億円超
中日新聞 2015年12月7日
東京工業大は〇五年以降、炭素繊維複合材などに関連する十一件の研究に計八十七万ドル(同一億六百八十万円)の提供を受けることで米軍と合意。大学内で定めた要領に基づいて審議し「研究ポリシーにかなうものであると判断されている」という。理化学研究所も〇〇~一〇年に二件で計四千七百九十八万円の資金提供を受けた。非破壊検査などに関連する技術と、レーザー加工技術の基礎研究が対象だった。
名城大は「〇九年に二百五十万円を受ける契約をした」と回答。一〇、一二年に計三百九十二万円の提供を受けた物質・材料研究機構は他にも米軍からの資金提供があったと答えたが、「先方(米軍)の意向により公開は控える」とした。
複数の大学や研究者は「研究費の不足を補うためだった」と説明。資金は研究に使う薬品の購入などに充て、米軍には「簡単な報告書を書いて送っただけ」としているが、報告書が米軍でどう利用されたかなど詳細は分からないという。
◆米軍資金は深く浸透
<米軍からの資金受け入れに批判的な井原聡東北大名誉教授(技術史)の話>米軍の研究資金は学術界に深く、静かに浸透している。日本人研究者を囲い込むのが米軍の狙いだ。資金提供は軍事研究や秘密研究につながり、学問から自由を奪う恐れがある。海外では軍事研究や軍からの資金提供は行われているが、日本の学術界は軍事に関連する研究をしないのが特徴だった。この特徴を再度認識し、国内外に発信すべきだ。
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2015120702000083.html
【米軍の研究助成】軍学共同が進みかねない
高知新聞 2015年12月08日07時56分
科学者の使命は言うまでもなく、真理の探究や平和、福祉の推進だ。軍事的機関に協力したり、支援を受けたりすることは、努めて慎重でなければならない。
ところが、日本の12の大学と公的機関の研究者が2000年以降、米軍から2億円を超える研究資金を受け取っていたことが分かった。徳島、山口、福井などの地方国立大学も含まれており、制度として深く浸透していることが疑われる。
日本の防衛省もことし、軍事技術への応用が可能な研究などに研究費を支給する公募を行い、大学を中心に申し込みが相次いだ。
日本の学界は太平洋戦争に加担した苦い経験があるはずだが、「軍学共同」に進みかねない状況だ。早急なルール作りを求めたい。
米国政府の公表によると、日本の26の大学などの研究者に現在のレートで約1億8千万円が提供された。共同通信の取材では、公表されていない資金の受領もあり、総額は2億2646万円に上る。
対象は炭素繊維複合材やレーザー加工技術などの研究で、取材に対し、研究者らは「研究費の不足を補うためだった」と説明している。しかも、米軍には成果などの報告書を提出したが、米軍でどう利用されたかなど詳細は分からないという。
国立大は04年の法人化後、政府がほぼ毎年、運営費補助を減額しており、研究費の獲得に苦心している。軍事技術と民間用技術の境目があいまいになっていることも加わり、軍事的資金の利用に向かいやすい環境にある。
政府の集団的自衛権の行使容認で、大学などにこうした資金が一層流れる恐れがある。安易な利用を繰り返せば、抵抗感が薄らぎ、一線を越えかねない。
欧米では軍学共同は珍しくないが、日本の学界は太平洋戦争の反省から、軍事研究に距離を置いてきた。研究者らで組織する日本学術会議も戦後2度にわたって、戦争を目的とした科学研究は行わない声明を発表している。
1967年の声明では米軍からの資金提供にも警鐘を鳴らしている。当時から制度が存在し、問題視してきたことが分かる。にもかかわらず、現状が示しているものは何か。
学界は重い課題を突き付けられていると自覚すべきだ。
http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=348610&nwIW=1&nwVt=knd
米軍資金供与 科学者の節操はどこへ
信濃毎日新聞 12月08日
科学者としての節操を守るためにも、戦争を目的とする科学の研究には、今後絶対に従わない―。
戦後の1950年、日本の科学者を代表する機関である日本学術会議は声明で誓った。それを風化させてしまっていいのか。
2000年以降で少なくとも12の大学・機関の研究者が米軍から2億円を超す研究資金を受けていたことが分かった。
軍事利用が明白な研究要請だ。いくら研究費用が足りないとはいえ、応じるのは「科学者としての節操」を失っているとしか言いようがない。
米政府は日本国内26の大学などの研究者に資金を提供したとしている。12は取材で認めた大学・機関だけだ。実際に提供された資金はさらに多いとみられる。
一部しか認めていない機関もある。例えば、国立研究開発法人の物質・材料研究機構は、10、12年度の計約400万円のほかに、米軍の資金提供があったと答えながら「先方(米軍)の意向で公開は控える」としている。
資金提供の全体像はベールに包まれている。それだけでなく研究成果がどう活用されたかもはっきりしない。
在日米軍司令部は、日本の大学や研究機関に「数十年にわたって資金提供している」とする。60年代には既に発覚し、67年に日本学術会議が50年と同趣旨の声明をあらためて出している。
近年は「軍学共同」がいっそう進んでいるといわれる。背景にあるのが大学の研究費の先細りだ。国が支出する国立大の運営費交付金はこの10年間で1200億円近く減った。文部科学省が本年度版の科学技術白書で「腰を据えた研究ができる経費が減少している」と記したほどだ。
これを見透かしたように防衛省が本年度、軍事技術に応用できる研究に最大年3千万円を支給する公募制度を創設した。初回は無人飛行機に活用できる技術の大学研究など9件が採用された。
集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を整備した安倍晋三政権の下では、米軍や防衛省からの研究の求めは一層、増える恐れがある。
科学者の仕事は、発見しつくり出すことで終わりではなく、それがどう使われ、どんな影響を及ぼすかを社会に伝えなければならない―。ノーベル物理学賞を受けた朝永振一郎氏の言葉だ。研究成果の行き先を見通す目を各研究者が養ってほしい。
http://www.shinmai.co.jp/news/20151208/KT151207ETI090009000.php
アメリカ政府は、この12の大学、機関を含む国内の26の大学などの研究者に、資金と提供した、としています。このうち12の大学、機関が受け入れを認め、総額は2億円を超えました。日本の学術界では、先の大戦の反省から軍事研究と距離を置いてきましたが、最近は研究費不足や、軍事技術と民間用技術の境目があいまいになっている傾向から、抵抗感が少なくなっていて、統一ルール作りが必要との声も出ている、とのこと。
現在は、十分な透明性が確保されていないので、やはり軍事研究につながる可能性がある資金提供については統一ルールが必要だと思います。また、事後に検証できる仕組みづくりの必要性も指摘されています。公表されている大学でも、文書の保管期間が過ぎている、などの理由で、確認できないという回答が少なくなかった、ということです。いくら研究費が不足しているといっても、軍事利用が明らかな研究要請に応じるのは、科学者として恥ずべきことなのではないか、と考えるのは私だけでしょうか。
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