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理不尽な搾取がまかり通っている大学、そこで行われるクィア理論講座それ自体の意味、そしてピンクウォッシュ ~ 理論の信憑性の問題は「研究不正」の問題と共有できるのではないか──ここから、これを端緒に、その議論を深めるために

 

 2013年3月末、突然、非常勤講師を5年で雇い止めにするという就業規程が非常勤講師らのもとに送られてきた。そうでなくとも首都圏大学非常勤講師組合などの調査によると、非常勤講師の平均年収は300万円そこそこで、そのうち250万円未満が4割もいるといい、彼らにとっては死活問題だ。

 一方、専任教員の平均年収は、組合との団体交渉の場で副総長が約1500万円と明らかにしているが、実際には1400万円を切っていると専任教員たちは話している。授業計画の作成・実施、試験問題作成、採点、成績評価など、専任と非常勤の仕事内容に大差ない。

 早大の教員のうち非常勤講師は59%(12年度末)で、授業の半分近くが非正規の教員によって行われている。つまり多数派の教員(ほとんどは博士)がワーキングプアか、それに近い状態に置かれているのだ。

 

年収250万…早稲田大の非常勤講師らが、大学を刑事告発 突然の雇い止めの実態

 

 博士号を取得し、専任の教授と同じように講義しても、年収250万円ほどで研究費・出張費も自腹、社会保障もない劣悪な待遇で暮らす人たち。それが大学の非常勤講師だ。その実態を探るべく当事者を取材し、2010年度早稲田大学文学部の年間トータル講義数と500人強に及ぶ非常勤講師全リストを照合したところ、全2032コマのうち、実に51%が非常勤講師の担当であることが分かった。搾取の上に成り立つ早大は、賃金格差5倍の身分制度を放置する「格差拡大装置」と化している。正規・非正規問題を論じる学者は、まず足もとを改革してから公の場に出てくることだ。

 

早稲田大・非常勤講師の給与明細が語る“大学内搾取”の構造:MyNewsJapan

 

 

求人件名 早稲田大学文学学術院専任教員の公募(クィア・スタディーズ)

勤務形態 常勤(任期なし)

着任時期 2016年 04月 01日

備考 早稲田大学は、国際化、男女共同参画などダイバーシティの実現を推進しております。

 

https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=1&id=D115040216&ln_jor=0

 

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一般企業でも同様の動きをみせているところがいくつもある。12年の厚生労働省の調査によれば、有期契約労働者は1200万人いるとされているが、早大で噴出している問題は、これらの人びとすべてに影響するといえる。

 

ただ、その中でも早大の悪質なところは、5年雇い止めの就業規程を強行制定するために“偽装選挙”を実施したことである。

 就業規程を変更または新規に制定する時は、労働基準法90条によって、全労働者の半数を超える加盟者のいる組合があれば、その組合の意見を聴き、それがない場合には、「過半数代表者」を選出するべきことが定められている。選ばれた過半数代表者が意見書を提出し、その意見書と就業規程を労働基準監督署に届けるのが正しい方法なのだ。

 

年収250万…早稲田大の非常勤講師らが、大学を刑事告発 突然の雇い止めの実態

 

 本来、学問の府というのは、そうした世の中の理不尽さを糺す人材を輩出するところであるはずなのに、その大学の講義の場自体が、理不尽な“搾取”の場と化しているのである。

  “搾取”を土台とした大学――そこを出た人たちが中核をなしていく社会は、政治、経済、文化、科学、教育、家庭など社会のありとあらゆる分野で、搾取を「再生産」していき、格差を推し進めることになりはしないか。大学は、未来の社会の鏡であるがゆえに、心配、と言わざるを得ない。

 

早稲田大・非常勤講師の給与明細が語る“大学内搾取”の構造:MyNewsJapan

 

 

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