4261人(2012年度)もの非常勤教員を抱える早大は「本学の財政事情において無期雇用転換を受け入れる余裕がない」と、同月1日付で非常勤教員の契約を最長5年とする就業規則の制定を強行した。その手口は、大学がロックアウトされる入試期間中を狙って非常勤教員に知られぬよう公示書を投函する騙し討ち。さらに労基法では就業規則制定において過半数を代表する者による聴取が必要だが、その代表候補者から非常勤は除外されていた。
雇用を安定化するという改正労働契約法の趣旨とは真逆に、専任教授の既得権を守るため、ただでさえ不安定かつ低賃金な非正規労働者の雇用を、さらに不安定化しようとする早稲田大学のブラックぶりが明らかとなり、学内の労働法の名誉教授からも総長が告発されるという異常事態に発展しているのが本事件だ。
ブラック大学・早稲田が「非正規5年で無期転換」阻止のため偽装選挙で就業規則制定 学内労働法教授らが鎌田総長を刑事告発:MyNewsJapan
求人件名 早稲田大学文学学術院専任教員の公募(クィア・スタディーズ)
勤務形態 常勤(任期なし)
着任時期 2016年 04月 01日
備考 早稲田大学は、国際化、男女共同参画などダイバーシティの実現を推進しております。
https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=1&id=D115040216&ln_jor=0
大学の非常勤講師に関しては、就業規定がないことも珍しくない。つまり、低賃金・過重労働がうやむやで続けられてきたわけだが、低賃金とはいえ、長年にわたり授業を継続してきたのだ。それが、規則制定により、5年で雇い止めになることになり、これまでよりも、圧倒的に不利益を被る可能性が高い。
教務担当教員から「もしクーリング期間を入れるとすれば、どこに入れることが可能ですか?」と聞かれたら、「困ります」「暮らしていけません」と答える。絶対に○をつけてはならない。退職を自ら希望したことにされてしまう。クーリング期間中は失職状態であり、無収入。しかも期間終了後に復職できる保証はまったくない。
首都圏大学非常勤講師組合 早稲田ユニオン分会: 【5年で解雇】【週4コマ制限】早稲田大学非常勤講師の就業規則問題についての緊急説明会(7/5)報告
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