The Reverberator

EFFORTLESS FRENCH

子どもへの性的虐待とセクシュアルハラスメント問題 ~ 「クィア」の横暴に抵抗するために

境界線 ~ 自分の感情的なスペース、自分の身体的なスペース

アニタ・ロバーツ『自分を守る力を育てる セーフティーンの暴力防止プログラム』(園田雅代 監訳、金子書房)より 境界線とは何か 境界線とは、私たちのまわりにある目に見えないフェンス、「力を及ぼすことのできる領域」であり、自分の感情的、身体的なス…

被害者が加害者から逃げるのではなく、加害者を被害者から切り離すこと

キャロライン・M・バイヤリー『子どもが性被害をうけたとき お母さんと、支援者のための本』(宮地尚子、菊池美名子、湯川やよい 訳)より、後藤弘子「法的観点からみた日本における性的虐待の対応」 犯罪者に対して、これまで刑事法は、起こった行為につい…

パニック発作やフラッシュバックが襲ってきたときに

グループ・ウィズネス編『性暴力を生き抜いた少年と男性の癒しのガイド』(明石書店)より 性暴力は、あなたがまだ子どもであったろうが、10代の少年であったろうが、大人であったろうが関係なく、あなたの心に大きな衝撃を与える出来事になるでしょう。この…

多重被害者 ~ 被害とは出来事というよりも、そのような状態である

デイビッド・フィンケルホー(David Finkelhor) の『子ども被害者学のすすめ』(森田ゆり/金田ユリ子/定政由里子/森年恵 訳、岩波書店)より こんなに多くの子どもがこんなに多種の被害を経験しているからには、少なからぬオーバーラップがあるはずだ。…

レイプが性行為の一種ではなく、暴力犯罪の一種になったとき

ジュディス・ハーマン『心的外傷と回復』(中井久夫 訳、みすず書房)より 今日という日 私の小さな自然の身体の中に 私は腰をおろし、そして学ぶ── 女性である私の身体は あなたの身体のように どの街でも標的となって 十二の歳に 私から奪われた…… 私は一…

わが子を虐待した加害者を赦すべきか? 

キャロライン・M・バイヤリー『子どもが性被害をうけたとき お母さんと、支援者のための本』(宮地尚子/菊池美名子/湯川やよい 訳、明石書店)より第6章「宗教の問題」。 宗教的コミュニティにおけるドメスティック・バイオレンスや性暴力の問題をとりあげ…

”子どものころに性虐待を受けたあなたへ”

グループ・ウィズネス編『性暴力を生き抜いた少年と男性の癒しのガイド』(明石書店)より 子どものころに性虐待を受けたあなたへ 子どものころに性暴力に遭った場合、その当時は性虐待を受けたのかどうかよくわからなかった人もいるかもしれません。何が虐…

性的虐待順応症候群

森田ゆり『新・子どもの虐待 生きる力が侵されるとき』(岩波ブックレット)より 性的虐待を受けた子どもの訴えを信じて力になろうとする大人が少ないことを子どもは知っています。米国の精神科医ローランド・サミットは1983年に「性的虐待順応症候群」を発…

加害者は自分の性的な強迫行動を防衛するために、それを正当化する巧妙な知的システムを発展させる ~ いじめと性的虐待

ジュディス・ハーマン『心的外傷と回復』(中井久夫 訳、みすず書房)より第四章「監禁状態」 監禁状態は犯人と被害者とを長期間接触させ、特別なタイプの関係をつくりだす。強制的コントロールの一形である。このことは、捕虜、囚人、人質のように全く物理…

なぜ子どもが犯罪被害に遭いやすいことが広く認識されてこなかったのか ~ 相殺される被害と加害

デイビッド・フィンケルホー(David Finkelhor) の『子ども被害者学のすすめ』(森田ゆり/金田ユリ子/定政由里子/森年恵 訳、岩波書店)より メディアによって未成年被害者よりも未成年加害者に対して焦点があてられる問題 大半の米国人には、子どもは弱…

聖ディンプナ - 彼女はレイプ、強制的な結婚、近親姦に抵抗した、そして彼女は精神的な病を患った人たちの守護聖人になった

ジュディス・ハーマン『父-娘 近親姦 「家族」の闇を照らす』(斎藤学 訳、誠信書房)の序章より 一般的な信仰によれば、ディンプナ*1はアイルランドの異教の王とキリスト教徒の王女との娘として生まれる。母親は彼女がまだ小さいときに死んでしまうのである…

性的虐待被害者に強いられる金銭的負担

坪井節子/子どもの人権双書編集委員会『子どもたちと性』(明石書店)より 子どもの性的虐待であれば、児童相談所に相談してほしい。ただし児童相談所では、いまや子どもに関するあらゆる問題が山積みで、福祉司の受け持つケースが多すぎる。また、性的虐待…

恐怖構造の引き金は簡単に引かれ、消すことが難しい

デイビッド・フィンケルホー(David Finkelhor) の『子ども被害者学のすすめ』(森田ゆり/金田ユリ子/定政由里子/森年恵 訳、岩波書店)より 評価は、被害で何が起き、それはなぜなのかについての──それがいかに未熟なものだとしても──認知にかかってい…

接触のない性的虐待 ー 性的悪用、セクシュアリティの乱用、境界侵犯

リチャード・B. ガートナー『 少年への性的虐待 男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(宮地尚子ほか訳、作品社)より 接触のある虐待は、普通罪を問われる犯罪である。含まれるのは、虐待者が自分のペニス、指、舌、他の身体の部分や、何等かの物を用いて…

〈自分が信頼できる人を選んでよいのだよ〉という保証を被害者に与えること

ジュディス・L・ハーマン『心的外傷と回復』(中井久夫 訳、みすず書房)より 身体の統御から進んで、安全の焦点は環境の統御に移る。急性の外傷を受けた人には安全な避難の場が必要である。この非難の場を見つけて確保することは危機介入にあたって即座に…

なぜ子どもへの性的虐待加害者の行動原理を知らなければならない必要に駆られるのか。それはこの社会ではこれまでずっと被害者の声が無視されてきて、そしてこれからも被害者やその家族、友人、知人、支援者たちがいないことを前提にした「組織的暴力」によって被害者と加害者が同列に置かれ、時にまるで被害者らの心の痛みよりも加害者の欲望を優先させるかのような要求を突き付けられ、それによって被害者たちがさらに、これまで以上に、沈黙させられてしまうからだ──そのような世界の中にあっても居場所を探さなくてはならないからだ。

森田ゆり『子どもと暴力 子どもたちと語るために』(岩波現代文庫)より 性虐待がかなりの数で起きていること、そしてその被害者への影響の深刻さが明らかになるにつて、1970年代の後半から北米では子どもたちに防止教育を提供する動きが市民レベルで始まっ…

性的虐待への反応 ー 侵入思考、過覚醒、悪夢、夜驚、麻痺、再体験、解離、健忘、フラッシュバック

リチャード・B. ガートナー『 少年への性的虐待 男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(宮地尚子ほか訳、作品社)より 小児期の性的なトラウマをあますところなく示す、明確な臨床像は特に存在しない。しかし、性的虐待を受けたことがある女性や男性に共通…

「性的裏切り」「性的虐待」「近親姦」「トラウマ」

リチャード・B. ガートナー『 少年への性的虐待 男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(宮地尚子ほか訳、作品社)より 「性的裏切り(sexual betrayal)」は、「性的虐待(sexual abuse)」、「近親姦(incest)」、「性的トラウマ(sexual trauma)」とい…

ミーガン法の弊害

森田ゆり『子どもの性的虐待』(岩波新書)より 性犯罪者の個人情報の公開制度としてよく知られているのが、米国のミーガン法である。1995年にニュージャージー州法として成立し、97年には連邦法として施工された。すでに刑を終えた人の個人情報を公開するこ…

ぼくの話を聞いてほしい

クリスティアン・D・イェンセン『ぼくの話を聞いてほしい 児童性的虐待からの再生』(山下丈 訳、講談社)より 『ぼくの話を聞いてほしい』 訳者のまえがきより 9歳のクリスティアンは、友達ニコライの家族と南仏プロヴァンスの小さな村にバカンスに出かけ…

標的の充足力、標的への敵意、標的の脆弱性 ~ 被害者学の視点から

デイビッド・フィンケルホー(David Finkelhor) の『子ども被害者学のすすめ』(森田ゆり/金田ユリ子/定政由里子/森年恵 訳、岩波書店)より 被害者学とは 被害者学とは、犯罪や事故、自然災害などの被害者とその家族や遺族に注目し、被害者の救済支援、…

沈黙の共謀 ~ 「誰にも言うなよ」と加害者が強いる沈黙、被害者が守ろうとする沈黙、そして被害者が語れない環境を温存している社会全体が培養する沈黙

森田ゆり『子どもの性的虐待』(岩波新書)より 沈黙の共謀 なぜ子どもへの性的虐待が起きるのか。この素朴な疑問に対する答えは単純ではない。一つの性的虐待ケースの発生にはさまざまな要因が重なっている。個人、家庭の持つ要因の背後には、文化的・社会…

児童期に性犯罪被害に遭わなかった幸福な人たちにあわせて社会をつくるのではなく、児童性的虐待被害者たちが暮らしやすい社会にするよう配慮すること

柴田朋『子どもの性虐待と人権 社会的ケア構築への視座』(明石書店)より 児童性的虐待という極端なトラウマ状態に襲われると、脳における感情のセンサーともいうべき扁桃体から、ある種のホルモンが放出される。そのホルモンは、直面する外界の情報(出来…

デート中の出来事──少年と少女の性暴力

ロジャー・J.R.レヴェスク『子どもの性的虐待と国際人権』(萩原重夫訳、明石書店)より。 少年は、大人によって行われた場合には、DVとか、夫婦間暴力とかと名づけられるものと同じ性質の、身体的、心理的、および性的虐待を、自身の性的関係において…

セックス・リング 同一の加害者の下で複数の被害者が抱いてしまう共犯意識

アンデシュ・ニューマン、ベリエ・スヴェンソンの『性的虐待を受けた少年たち ボーイズ・クリニックの治療記録』(太田美幸訳、新評論)より。 ペドファイルが子どもへの性的虐待で告発された場合、その人物は複数の子どもに虐待行為を行っていたと考えられ…

「被害者の責務でしょう、あなたたちがやらないと変わりませんよ」 ~ 「泣き寝入り」という言葉の暴力

『現代思想』(1997年12月号、青土社)に掲載された、弁護士の角田由紀子氏と翻訳業の原美奈子氏との対談「性暴力と法」より。 原 たとえば性暴力の場合、告訴率が低いとか、それ以前に被害者が警察に届け出ないから、泣き寝入りをしないで警察に訴えて下さ…

子どもの性的虐待の理解 ~ 虐待の程度および虐待の性質

ロジャー・J.R.レヴェスク『子どもの性的虐待と国際人権』(萩原重夫訳、明石書店)より。 虐待の程度 性的虐待であるとみなされる行為に対する、相当の関心と広範な非難にもかかわらず、様々な国で子どもたちが虐待を経験する程度は、依然として本質的…

女性による男児への性的虐待という現実と、女性による男性あるいは少年への性的虐待は定義上不可能であるという誤った「男性的」世界観の間で

アンデシュ・ニューマン、ベリエ・スヴェンソンの『性的虐待を受けた少年たち ボーイズ・クリニックの治療記録』(太田美幸訳、新評論)より。 女性による虐待 女性による子どもの性的搾取は、どれくらい起こっているのだろうか。これについての調査結果を見…

日本における少年への性的虐待に対する社会的認知

アンデシュ・ニューマン、ベリエ・スヴェンソンの『性的虐待を受けた少年たち ボーイズ・クリニックの治療記録』(新評論)で、冒頭、本書の訳者である太田美幸氏が「訳者まえがき」で日本の現状について解説している。 性的虐待 日本の現状 1998年に「 子ど…

「なぜ私は加害者の弁護をしないのか」 ~ 性暴力と法

以下は『現代思想』(1997年12月号、青土社)に掲載された「性暴力と法」について、弁護士の角田由紀子氏と翻訳業の原美奈子氏との対談より。 角田 法律の中で強姦の問題は、最初から最後まで加害者側の男の頭でしか考えられていないし、語られていない。だ…