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The Reverberator

メモ用

ヒズボラと親和的な何か

「ヒズブッラーとは何か――抵抗と革命の30年 末近浩太 / 中東地域研究」より

 

海兵隊の1日の死者数は太平洋戦争時の「硫黄島の戦い」に次ぐ

ヒズブッラーは、イスラエル国防軍だけではなく、米仏伊からなる多国籍の平和維持部隊までも「占領軍」として攻撃した(理由は後述する)。だが、重火器や航空機を擁する正規軍との戦力差は明らかであった。そこで、彼らが編み出したのが、爆薬を満載したトラックを用いた自爆攻撃であった。

 

最初の自爆攻撃は、1982年11月11日、レバノン南部の街スール(ティール)のイスラエル国防軍兵営に対して行われ、90名の犠牲者を出した。翌年には、ベイルートの米国大使館が標的となり、CIA(米国中央情報局)の職員8名を含む米国人14名が死亡した。また、その直後には、米国海兵隊の兵営への自爆攻撃が行われ、実に241名もの米国人が犠牲となった。このときの海兵隊の1日の死者数(200名超)は太平洋戦争時の「硫黄島の戦い」に次ぐものであり、米軍全体として見ても単一の攻撃被害としては第二次世界大戦後最大規模のものとなった。これらのレバノンでの苦い経験は、今日でもCIAと海兵隊のトラウマとなっている。

 

http://synodos.jp/international/7006

 

エリートと非エリートの断絶と確執を防ぐことを目的としたヒズボラの巧妙な組織運営

これらのメディアでは、ヒズブッラーが「抵抗」すべき相手とは、いまやイスラエルという従来からの脅威だけではなく、疾病、貧困、環境破壊といった人類全体にとっての脅威であると喧伝される。その狙いは、指導部の幹部や軍事部門の戦闘員といったエリートも、NGOの職員や普通の日常生活を営む一般の支持者も、同じ「抵抗」にたずさわる者として一体感と誇りを共有させることにある。組織運営のなかで常に問題となるエリートと非エリートの断絶や確執を防ぐための巧みなメディア戦略である。

 

http://synodos.jp/international/7006/3

 

 

一転、レバノンの民主政(全会一致)の弱点を突き権力を掌握しようとするヒズボラ

 彼らの「革命」は、それまでの野党の立場から体制を「内破」していく戦略から、一挙に国家権力の掌握を目指す戦略へとシフトアップしたのである。

 

ヒズブッラーは、まず、国内の親シリア派の政治家や政党を糾合し、シリアからの独立の歓喜に沸き立つ「杉の木革命」に対して「反革命」を挑んだ。2005年と2009年の国民議会選挙では反シリア派の政党連合に僅差で敗北を喫するも、コンセンサス(全会一致)による意思決定を基本とするレバノン独特の民主政治——「宗派制度」と呼ばれる——の弱点を突き、また、ときには大規模な街頭行動や武力の行使に訴えることで、幾度にもわたってレバノン国家の意思決定機能を麻痺させた。そして、これを梃子に自派への閣僚ポストの割り当てや自派に不利となる法案や閣議決定の撤回の要求を行い、レバノン政府内での発言力を増大させていった。

 

http://synodos.jp/international/7006/3

 

「抵抗」の名の下にアサド政権を支持・支援するヒズボラ

このように、ヒズブッラーが結成以来シリアとの戦略的な互恵関係にあり、また、そのことがレバノンでの組織の生き残りに重大な意味を持つのだとすれば、冒頭で触れたように、2011年からのシリア「内戦」において彼らがアサド政権の支持・支援に向かったのは必然であったと言える。つまり、アサド政権の存続は、レバノン国内で自らが築き上げてきた地位と権力を維持するための必要条件であった。

 

しかし、ヒズブッラーによるシリア「内戦」への参戦は、より広い文脈で見る必要もある。すなわち、筆者が「30年戦争」と呼ぶ、米国とその同盟国による覇権拡大とそれに抵抗しようとする諸国が対峙する構図である。先述のように、1979年のエジプトのイスラエルとの単独和平とイランのイスラーム革命によって、中東における対イスラエル強硬派の地位はエジプトからイランへと移った。その結果、イスラエルとの戦争状態にあったシリアは新たな同盟者としてイランへと接近していった。ヒズブッラーは、この1970年代末から80年代初頭の中東政治の構造変容によって生まれたと言ってもよい。

 

要するに、イラン、シリア、ヒズブッラーはイスラエルと米国を共通の脅威とする「鉄の三角形」を築いてきたことになる。それゆえに、ヒズブッラーにとって、アサド政権に対する支持・支援は、レバノン国内での自らの地位だけではなく、中東全体でのシリアとイランの地位を護ることと同義であり、欧米主導の地域秩序の出現を阻止するための戦いを意味するのである(ロシアと中国もこの構図を維持するためにアサド政権への支持・支援している)。

 

http://synodos.jp/international/7006/4

 

 

 

イスラム主義と左派――シャルリ・エブド襲撃事件に記して

マイケル・ウォルツァー

 思想家ジュディス・バトラーも同様の誤りを犯している。彼女は「ハマスヒズボラは革新的な社会運動であり、左派に属する、グローバルな左派の一部として理解することはとても重要である」という。2006年にこう主張した彼女は、2012年になって、無視できない修正を加えて、同じ主張を繰り返した。

 

http://synodos.jp/international/12879/3