The Reverberator

EFFORTLESS FRENCH

被虐待児の親権と母親の性的指向に対する攻撃

キャロライン・M・バイヤリー『子どもが性被害をうけたとき お母さんと、支援者のための本』(宮地尚子、菊池美名子、湯川やよい 訳)より 子どもを自分の夫に虐待された母親なら、「子どもの養育についての自分の権利を知りたい」と真っ先に考えるでしょう…

子どもの性的虐待を発見するきっかけ ~ 医学的視点から

女性犯罪研究会編『性犯罪・被害 性犯罪規定の見直しに向けて』(尚学社)より 性的虐待を発見するきっかけには、被害者側のもの(非性器損傷・行動・特性)と加害者側のもの(行動・特性)と家庭に関するものが存在する。 (1) 性的虐待における損傷の特徴…

アメリカにおける子どもの性的虐待をめぐる典型的な司法手続きの流れ

キャロライン・M・バイヤリー『子どもが性被害をうけたとき お母さんと、支援者のための本』(宮地尚子、菊池美名子、湯川やよい 訳)より 1 警察に対する通告は、あなたかほかの関係者が行います。近親姦の事件では、通告が学校関係者や第三者によりなされ…

子どもの性的虐待に関する法的世界 糾問的制度と弾劾的制度

ロジャー・J.R.レヴェスク『子どもの性的虐待と国際人権』(萩原重夫訳、明石書店)より。 法制度は、問題解決への社会的対応を大きく限定する。いくつかの法制度形態が存在するけれども、それらは、両極端の間で運用される傾向にある。 一つの極は、無…

他人の境界を侵害し彼らを利用するような人は加害者と称される、境界は教える必要がある

ピア・メロディ『児童虐待と共依存 自己喪失の病』(内田恒久 訳、そうろん社)より 境界システムは目に見えない、三つの目的を持った象徴的な「壁」である。その目的は①私たちの領域へ他人が侵入したり、私たちを害することを防ぐこと②私たちが他人の領域へ…

女性は少年をレイプできるか? あるいは少年は(年上の男性による加害行為以外に)被害を訴えることができるか? ~ 性的虐待を性的通過儀礼として捉えること

リチャード・B. ガートナー『 少年への性的虐待 男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(宮地尚子ほか訳、作品社)より 13歳の少年をレイプしたと法的に訴えられている37歳の女性の裁判を真剣にとりあげたある新聞記事に、女性と少年の間の性行為に対する社…

セクシュアルハラスメントは「そのような関係」にある個人と個人の境界線の問題

森田ゆり『子どもと暴力 子どもたちと語るために』(岩波現代文庫)より岩波現代文庫版あとがき、デービッド・フィンケルホーとの対談 森田 司法面接とは主として性的虐待を受けた子どもから、①虐待が虚偽の訴えではなく、実際に起きたことを確認するために…

少年への性的虐待は映画ではどう描写されているのか、あるいは何が描かれていないのか

リチャード・B. ガートナー『 少年への性的虐待 男性被害者の心的外傷と精神分析治療』(宮地尚子ほか訳、作品社)より 成人女性が少年の性を目覚めさせるという映画描写 Johanek(1988) が述べるように、「大衆文学は、年上の女性によって大人の性へと導かれ…

性暴力における被害者非難と法的判断

アニタ・ロバーツ『自分を守る力を育てる セーフティーンの暴力防止プログラム』(園田雅代 監訳、金子書房)より 性的暴行 非難と責任についての明瞭な像 ジェンダーにもとづいた思い込みには、女性のもつ性的な力に関するもの、ならびに「男性は性衝動の奴…

反道徳性から性的自由に対する侵害へ ~ イタリアにおける「性暴力」の罪

女性犯罪研究会編『性犯罪・被害 性犯罪規定の見直しに向けて』(尚学社)より 1996年の性犯罪規定の改正でもっとも重要な点は、性犯罪の規定を、社会的法益に対する罪から、個人の性的自由に対する罪に大きく改めたことである。それは、性的自由の保護を実…

秘密の開示 ~ 自分よりさらに助けを得られない立場にある年下の同胞を守るために

ジュディス・ハーマン『父-娘 近親姦 「家族」の闇を照らす』(斎藤学 訳、誠信書房)より バックグラウンドや理論的方向性がどのようなものであれ、近親姦が起きている家族の問題に広範囲にわたって取り組んできた専門家は、本質的な三点では一致しているよ…

未成年の性犯罪被害者に対する公訴時効 ─ 日本、フランス、ドイツ、韓国の現状

女性犯罪研究会編『性犯罪・被害 性犯罪規定の見直しに向けて』(尚学社)より [日本における性犯罪の公訴時効の現状] 性犯罪の公訴時効期間は現在、次のとおりである。強姦罪、準強姦罪、集団強姦罪は10年(刑事訴訟法250条2項3号)、強姦致傷罪は15年(…

性暴力にかかわる言葉を被害者の視点から定義しなおし、確立していくこと、語りはじめること、たどたどしくとも語りはじめること、沈黙をやぶったその声を大きく広く響き渡らせること

森田ゆり編著『沈黙をやぶって 子ども時代に性暴力を受けた女性たちの証言』(築地書館)より この本を一読して、なんだこの程度のことで痛いだ生きづらいだといっているのか、世間にはもっとひどい目にあっても黙って耐えて生きている人間がいっぱいいるん…

”自殺したいと思っていい。でも、実行はしないで” ~ 性暴力被害者の心の危機

グループ・ウィズネス編『性暴力を生き抜いた少年と男性の癒しのガイド』(明石書店)より 性暴力とは、自分のからだだけでなく、心も魂も侵害される加害行為です。性暴力は大きなトラウマで、心とからだや強い衝撃を与えます。場合によっては殺されたり、ケ…

児童虐待経験者の親密関係は飢えた者のように庇護とケアを求める衝動によって駆り立てられており、見捨てられるのではないか、搾取されるのではないかという恐怖につきまとわれる

ジュディス・ハーマン『心的外傷と回復』(中井久夫 訳、みすず書房)より 多くの被虐待児は大人になれば逃れられ、自由になれるという希望にしがみついている。しかし強要的コントロールという環境の中で形成された人格は成人の生活によく適応できない。 児…

フランスにおける性交同意可能年齢の意味することと、夫婦間(親密圏)強姦の加重事由が意味すること

女性犯罪研究会編『性犯罪・被害 性犯罪規定の見直しに向けて』(尚学社)より 1.若年者・弱者への類型的保護と近親姦罪の復活 日本と異なり、フランス刑法の性犯罪規定は、若年者・弱者への類型的保護が特徴である。その保護には、被害者の属性に対する保…

ナポレオン刑法典における強姦罪から1980年12月23日の法律へ ~ フランス刑法における性犯罪の沿革

女性犯罪研究会編『性犯罪・被害 性犯罪規定の見直しに向けて』(尚学社)より 1.ナポレオン刑法典における強姦罪 19世紀初頭、世界の模範となったフランスのナポレオン刑法典(1810年)における強姦罪は重罪(重罪、軽罪、違警罪というフランス刑法上の犯…

性的虐待の経験が被害者の性的指向を決めるわけではない

アンデシュ・ニューマン、ベリエ・スヴェンソンの『性的虐待を受けた少年たち ボーイズ・クリニックの治療記録』(太田美幸訳、新評論)より。 私たちのところにやって来る少年たちの多くは、トーマスのように、男性から性的虐待を受けたことによって、自分…

境界線 ~ 自分の感情的なスペース、自分の身体的なスペース

アニタ・ロバーツ『自分を守る力を育てる セーフティーンの暴力防止プログラム』(園田雅代 監訳、金子書房)より 境界線とは何か 境界線とは、私たちのまわりにある目に見えないフェンス、「力を及ぼすことのできる領域」であり、自分の感情的、身体的なス…

被害者が加害者から逃げるのではなく、加害者を被害者から切り離すこと

キャロライン・M・バイヤリー『子どもが性被害をうけたとき お母さんと、支援者のための本』(宮地尚子、菊池美名子、湯川やよい 訳)より、後藤弘子「法的観点からみた日本における性的虐待の対応」 犯罪者に対して、これまで刑事法は、起こった行為につい…

パニック発作やフラッシュバックが襲ってきたときに

グループ・ウィズネス編『性暴力を生き抜いた少年と男性の癒しのガイド』(明石書店)より 性暴力は、あなたがまだ子どもであったろうが、10代の少年であったろうが、大人であったろうが関係なく、あなたの心に大きな衝撃を与える出来事になるでしょう。この…

多重被害者 ~ 被害とは出来事というよりも、そのような状態である

デイビッド・フィンケルホー(David Finkelhor) の『子ども被害者学のすすめ』(森田ゆり/金田ユリ子/定政由里子/森年恵 訳、岩波書店)より こんなに多くの子どもがこんなに多種の被害を経験しているからには、少なからぬオーバーラップがあるはずだ。…

レイプが性行為の一種ではなく、暴力犯罪の一種になったとき

ジュディス・ハーマン『心的外傷と回復』(中井久夫 訳、みすず書房)より 今日という日 私の小さな自然の身体の中に 私は腰をおろし、そして学ぶ── 女性である私の身体は あなたの身体のように どの街でも標的となって 十二の歳に 私から奪われた…… 私は一…

わが子を虐待した加害者を赦すべきか? 

キャロライン・M・バイヤリー『子どもが性被害をうけたとき お母さんと、支援者のための本』(宮地尚子/菊池美名子/湯川やよい 訳、明石書店)より第6章「宗教の問題」。 宗教的コミュニティにおけるドメスティック・バイオレンスや性暴力の問題をとりあげ…

”子どものころに性虐待を受けたあなたへ”

グループ・ウィズネス編『性暴力を生き抜いた少年と男性の癒しのガイド』(明石書店)より 子どものころに性虐待を受けたあなたへ 子どものころに性暴力に遭った場合、その当時は性虐待を受けたのかどうかよくわからなかった人もいるかもしれません。何が虐…

性的虐待順応症候群

森田ゆり『新・子どもの虐待 生きる力が侵されるとき』(岩波ブックレット)より 性的虐待を受けた子どもの訴えを信じて力になろうとする大人が少ないことを子どもは知っています。米国の精神科医ローランド・サミットは1983年に「性的虐待順応症候群」を発…

加害者は自分の性的な強迫行動を防衛するために、それを正当化する巧妙な知的システムを発展させる ~ いじめと性的虐待

ジュディス・ハーマン『心的外傷と回復』(中井久夫 訳、みすず書房)より第四章「監禁状態」 監禁状態は犯人と被害者とを長期間接触させ、特別なタイプの関係をつくりだす。強制的コントロールの一形である。このことは、捕虜、囚人、人質のように全く物理…

なぜ子どもが犯罪被害に遭いやすいことが広く認識されてこなかったのか ~ 相殺される被害と加害

デイビッド・フィンケルホー(David Finkelhor) の『子ども被害者学のすすめ』(森田ゆり/金田ユリ子/定政由里子/森年恵 訳、岩波書店)より メディアによって未成年被害者よりも未成年加害者に対して焦点があてられる問題 大半の米国人には、子どもは弱…

聖ディンプナ - 彼女はレイプ、強制的な結婚、近親姦に抵抗した、そして彼女は精神的な病を患った人たちの守護聖人になった

ジュディス・ハーマン『父-娘 近親姦 「家族」の闇を照らす』(斎藤学 訳、誠信書房)の序章より 一般的な信仰によれば、ディンプナ*1はアイルランドの異教の王とキリスト教徒の王女との娘として生まれる。母親は彼女がまだ小さいときに死んでしまうのである…

性的虐待被害者に強いられる金銭的負担

坪井節子/子どもの人権双書編集委員会『子どもたちと性』(明石書店)より 子どもの性的虐待であれば、児童相談所に相談してほしい。ただし児童相談所では、いまや子どもに関するあらゆる問題が山積みで、福祉司の受け持つケースが多すぎる。また、性的虐待…